
こんにちは、パリノメモの筆者をやっているジュロウです。ツイッターはこちらです(@Parisnomemo_)。
パリに到着してからあっという間に3週間が経過しました。フランス名物である行政機関での「たらい回し」からはまだまだ抜け出せませんが、それでも少しずつこの国に根をおろすことができてきました。
というのも、留学生活でもっとも大事な要素であるといっても過言ではない住居に徐々に慣れてきたからです。留学生活の第一歩は、何よりもまず、住まいに慣れることから始まるといえるでしょう。
そういった経緯を踏まえて、今回は、ボクが実際に住んでいる国際大学都市(Cité Internationale Universitaire)の紹介と、この巨大学生寮に対する第一印象をレポートとして綴っていきたいと思います。
国際大学都市(Cité Internationale Universitaire)とは?
国際大学都市の概要
国際大学都市とは、あまり知られてはいませんが、パリ14区にある巨大学生寮のことを指します。34ヘクタール(東京ドーム7個以上)の敷地内に40近くの建物があり、それらが学生寮として機能しています。
あまりの広大さに、「大学寮」の表現だけでは追いつかず、「大学都市」と呼称されています。

国際大学都市の正門:ここをくぐった先は34ヘクタールの敷地内
入居ができるのは学生だけにとどまらず、研究者・芸術家・音楽家なども含まれます。
この学生都市最大の特徴は、ただ単に巨大な学生寮であるということではなくて、各建物がそれぞれの国別のテーマを持っているということです。
たとえば、ボクが住んでいるのは日本風に建築された「日本館」、隣には「イタリア館」や「スペイン館」があります。そういった国別の「館」が約40集まり、この学生としを形作っているのです。まさに国際大学都市であるといえるでしょう。

無料で配られている全体マップ:赤いマークのついてるところが正門の位置

パリ市内における国際大学都市の位置

入り口入ってすぐの敷地内、とにかく広い
実際に3週間住んでみて抱いた第一印象
入居したのは「日本館(Maison du Japon)」

日本館の正面写真
ボクが入居したのは「日本館(Maison du Japon)」です。
個人的にモロッコに思い入れがあったので「モロッコ館」に住みたかったのですが、日本国籍をもつ人は必ず日本館を通して入居申請をしなければならず、そのうち他の館の学生と「交換」という形で外国館に入居できる人は、毎年抽選で決まる模様です。
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さて、じつはこの「日本館」が建設されるにあたって、ある種の伝説的な物語がありました。
1920年台に、フランス政府は「国際大学都市」を作るために各国政府に資金援助要請をしたそうです。日本政府は「資金不足」という理由でその要請を拒否してしまったようですが、当時フランスにいた実業家・薩摩治郎八(さつまじろはち)がなんと全額出資を提案。1人の実業家の出資によってパリにある国際大学都市の中に「日本館」が建設され、その建物が今に至るまで引き継がれているのです。
薩摩治郎八は、当時のはぶりのよさから「バロン薩摩(薩摩男爵)」とまで呼ばれたそうです。
「安いから住む」というモチベーションからは抜けきれない
ところが、そんな爽快な誕生秘話はもう90年ほど前の話です。そうした晴れやかな日本館の面影はあまり残っていません。
あくまで入居を開始して3週間程度の住人としての意見ですが、日本館の内部はじっとりとしたやや暗い雰囲気で、第一印象は少なくとも「ポジティブ」なものではないというのが正直なところです。

入り口入ってすぐの通路
もちろん、1人部屋が光熱費・インターネット代込みで380 ~ 540€、夫婦部屋が650€前後(※いずれも学生の場合。研究者の場合は料金が加算される)であるといったように、パリ市内でその破格的な価格を提示していることを考慮すると、あまりにも十全な宿泊施設であるということに疑いようはありません。
しかしながら、その破格の安さがあるがゆえに、住人としてはなにか不満があっても「安いから仕方がない」という自己納得をする感情があることも否定はできません。たとえば、水道水の質に少々の問題が見られたり、共用キッチンが狭いなど、生活をするうえでの些細な不満はあるものの、やはり「安いから仕方がない」で落ち着いてしまうのです。多少高くなろうとも条件のいい施設がパリ市内で見つかれば、特に夫婦で来ている場合など、移動をしたいという人は少なくはないでしょう(そう簡単に条件のいい物件は見つかりませんが)。
寮の運営側としては最大限の努力をしている実態があるので、それを批判することはできないのですが、国際大学都市の日本館に住む1人の学生としては、現段階ではそれが率直な感想となります。

各階に1つずつある共用キッチン

共用シャワー
貧乏な学生が済む場所としては、立地も良く、セキュリティもしっかりとしていて、日本館が全くもって申し分のない施設であることに間違いはありません。他の国の館がとても晴れやかであるがゆえに(もちろん値段も日本館より高い)、少々見劣りして見えてしまうだけかもしれません。
いずれにせよ、今後、日本館の積極的な改築が実行されることを「バロン薩摩」のファンの一人として期待したいという気持ちはたしかなのです。
国際大学都市を満喫する鍵は「交友関係」
国際大学都市における学生生活は、居住者本人が積極的になればなるほど、それに応じて限りなく「楽しい」ものとなります。
というのも国際大学都市での生活は、住んでいる館の内部だけにとどまるものではないからです。

国際大学都市内の芝生:週末になるとピクニックをする人で溢れかえる

国際大学都市内にあるテニスコート
国際大学都市は東京ドーム7個以上という敷地面積を誇っているだけあって、その中に様々な施設が附属しています。学生の生活をサポートするための学食・銀行・郵便局だけにとどまらず、大きな芝生の広場であったり、テニスコートやプールまでもが内部におかれているのです。
もちろんこれらの施設を1人で利用するだけでは、その楽しさには限界がありますが、交友の輪を広げると「夢のキャンパス・ライフ」と呼ぶにふさわしい生活が待っています。
「都市」の敷地内に多くの施設があるため、たとえば日が長い夏季なんかは、平日も休日も関係なく、毎日友人とピクニックをしながら夕食をとることができます。友人をさそってテニスやその他のスポーツを楽しむこともできます。国際大学都市を楽しむ鍵は「交友の輪」なのです。
それを意識してなのか、国際大学都市や、各館の運営側も積極的に交流の場所を設けようとしています。毎日どこかの館で文化的なイベントを開催していますし、懇親会やダンスパーティーなどもその機会に事欠きません。

日本館交流会の様子①

日本館交流会の様子②(右から2番目が筆者)
いつでも気軽に誘える友人たちさえ手に入れてしまえば、国際大学都市は毎日が修学旅行のような楽しさに溢れる環境に早変わりするのです。

国際大学都市のWEBサイトでは都市内で行われるすべてのイベントを検索することができる
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ただ、そうしたコミュニティを作り上げるのにはやはり時間がかかるため、国際大学都市を満喫できるようになるには、現実的に入居から最低でも3ヶ月の期間は必要であると感じています。
まだ3週間しか時間が経っていないボクも、これから時が過ぎるにつれて、この巨大な学生寮の中で充実した日々を送れるようになるでしょう。そうした願いを込めて、今回のレポートを終えたいと思います。
また随時、国際大学都市に関する報告をしていきます。
初めまして。大阪に住む女性です。
昔、ソルボンヌ大学文明講座を受けていたときに日本館に滞在していました。
4日(水)リヨン、アルザス地方に向けて出発し、9日(月)14時頃にパリ着、翌日フランクフルト経由で帰国します。久しぶりに日本館を訪ねようと思っていますが、自由に内部を見学できるでしょうか?