2015年度コンクール当日。左がパリノメモ筆者、右が井上遼さん。

練習場所はブルキナファソ!?フランス語コンクール優勝者に秘訣をインタビュー

2016/10/01

毎年、日仏会館によって「フランス語コンクール」が開催されています。前回は、実際にボクがそのコンクールに出場して敗退した話をしました。今回は、そのコンクールにて見事優勝を果たした井上遼さんにインタビューをしてわかったコンクール優勝の秘訣を紹介します。

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こんにちは、ジュロウです。この度、2015のフランス語コンクールに優勝をした井上遼さん(早稲田大学生)にインタビューをしました。

井上遼さんのフランス語能力や、コンクール当日の様子についてお話していただけましたので紹介します。

※ TOPの写真は、左がパリノメモ筆者、右が井上遼さんです。

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フランス語コンクールとは?

フランス語コンクールとは、日仏会館が毎年秋に開催している、フランス語によるスピーチ&質疑応答能力を競う大会です。詳しくは下記の記事か、日仏会館のホームページを参照してください。

フランス語コンクール
日仏会館は毎年、フランス語コンクールという魅力的なイベントを開催しています。定められたテーマに従って、約15名ほどの出場者に5-7分のスピーチをフランス語で行ってもらい、成績優秀者

 

 

2015年度優勝者、井上遼さんのフランス語歴は?

Q. 井上さんのフランス語学習歴を簡単に教えて下さい

 

A. 高校1年生で第二外国語として履修して以来、総計すると7年ほどになります。コンクール参加当時、学習期間はおよそ6年と半年でした。そのうちでフランス語圏に滞在していた期間は、約15ヶ月ほどです。

所属している早稲田大学のプログラムを利用して、フランスのエクス=アン=プロヴァンスに1年弱の期間にわたって交換留学したのち、直後に日本の大学を半年弱ほど休学して西アフリカのブルキナファソという国に滞在していました。コンクールに参加したのは、海外生活を終えて日本に帰国してから半年ほど経ったころです。
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Q. 西アフリカのブルキナファソに留学されたということですが、ご自身のフランス語能力向上には影響がありましたか

 

A. いまから振り返れば、大いに影響はあったと思います。初めの一年間のフランス滞在中、ある時期から自身の語学力の上達はなかなかはっきりとした形では実感しづらくなっていました。裏を返せば、その時点でも、それなりにフランス語を扱えていたといえるかもしれません。

ただ、ブルキナファソに滞在中は、大学で授業を受けるのはもちろん、ほぼ毎日のように現地で知り合った友人たちと集って、よもやま話に花を咲かせていいました。もしかすると、フランス語でのコミュニケーションの総量でいうと、フランス滞在中よりも多かったかもしれません。ときどきたわいもない会話から始まって、いまにも殴り合いが始まるのではないかというくらいの議論になったこともあります。ブルキナファソ人は、フランス人よりも一層、僕とはまったく異なる価値観をもっているところがあったので、その意味では彼らに自分の意見を理解させ、納得させるというのは非常に骨の折れる作業でした。たとえば、僕が無神論者であるということを彼らに説明するのはどれだけ大変だったことか。そういう議論を重ねることで、フランス語のディスカッションの能力は格段に上がったのだと思います。

 

ちなみにブルキナファソは赤点のついている場所です

ちなみにブルキナファソは赤点のついている場所です(Google Map)

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コンクール出場における準備について

原稿はなにを意識して書いたか

集合写真:正面中央が井上さん

集合写真:正面中央が井上さん(日仏会館HPより)

Q. 大会に出場するためには、まず1次審査であるスピーチ原稿の書類審査に通らなければなりません。原稿を書く上で、何を意識されましたか。

A. 大会に参加するにあたって、おそらくもっとも重要なのは、レポートを書くことではなく、スピーチをすることを求められているということです。僕の参加した年の大会の掲げるテーマは「表現の自由はどこまで許されるか」というものでした。

この問いへの回答を寄せるにあたって、さまざまな方策が考えられますが、あくまでわたしたちはスピーチを求められているということに注意すると、自然と原稿内容の道すじがはっきりしてきます。つまり、スピーチをするということは、聴衆の関心をどれだけ惹きつけることができるかがもっとも肝要だということです。表現の自由についてを論じるならば、各国の憲法などの法規を比較検討をするのもひとつの手かもしれませんが、そんなに細かい話をべらべらと喋ってもおそらく聴衆は退屈してしまう。したがって、まずは個人的な体験についてを語るべきだろうと考えました。
前半には個人的な体験についてを語り、そこを基盤にしながら、後半に向けていかに抽象度の高い、普遍的な議論に接続できるか。語る対象について、個別性から抽象性へとレベルを変更していくときも、議論がなるべくスムースに運べるように意識して原稿を書いていました。そして最後には、多少キザになることは承知しつつ、発音して心地よくなるような ―― 自分で「決まった」と思えるような(笑)、締めの文章をどう入れるか、ということも重要だと思います。
   
※ 井上遼さんの原稿は、日仏会館HPの2015年度大会報告のページに公開されています。
 

大会前にどのような準備をしたか

Q. 大会への出場が決まったのち、実際にどのような練習を積まれましたか。

A. 一次審査の通過の連絡をいただいたのが決勝大会の1ヶ月ほど前だったと記憶しています。報せを受けてからは、まずは原稿を覚えることに集中しました。大筋はそのままですが、暗唱の練習をしていくなかで、提出した原稿にやむをえず多少の変更を加えた点もいくつかありました。そして、おそらくどの参加者もしていたでしょうが、自分の声を録音したり、話している様子を自分で映像に撮ったり、そういう練習はやはり必要だと思います。

いちばん効果的だったのは、大学でお世話になっているフランス語の先生や、フランス人の友人たち、あるいはフランス語を学習している日本人の友人など、できるだけたくさんの人たちと模擬発表の練習を行うことです。実際の大会同様、僕がスピーチを終えたあと、すぐに聞き手の方から発表内容に関する質問も投げかけてもらいます。はじめはなかなか機転を利かせてうまく答えられませんが、やっていくなかで自分でも要領がつかめてきます。

何にもっとも苦労したか

Q. 与えられたスピーチテーマは「表現の自由」に関わるものでした。事前練習においてもっとも苦労した点はなんですか。

A. やはり、当日寄せられるであろう質問とその回答を想定するという一連の作業でしょうか。7分のスピーチ原稿ではどうしても言えることが限られてきます。よほど完璧な原稿をつくらない限りは、おそらく内容面でも突っ込みどころがいくつか考えられると思うので、その突っ込みどころについてどれだけ深く考えられるかが勝負だと思います。たいていの場合、そういうところにこそもっともむずかしい問題系(problématique)が隠されています。正直、準備期間中にあれほど表現の自由について考えることになるとはまったく思っていませんでした(笑)。

そして、質疑応答の時間は5分しか与えられていないので、どれだけ簡潔に、直接的に質問に答えるかが鍵になってきます。そのためには、やはり自分の論点を明確化し、すぐに言語化できるような準備が必要となってくるでしょう。
 
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フランス語コンクール当日について

スピーチと質疑応答についての自己評価

スピーチ中の井上さん

スピーチ中の井上さん (日仏会館HPより)

 

Q. 当日、ご自身が行われたスピーチと質疑応答について、どう評価されますか。

A. じつは、当日のスピーチ発表では、一部原稿をど忘れしてしまい、10秒近く言葉に詰まっていました。言いたいことはわかっていたので、その場で言葉を考えて組み立てようとしましたが、無謀だときっぱりとあきらめて、その段落は丸ごと捨て、次の段落に飛んでいきました。緊張していたのか、いつもより相当早口で原稿を暗唱していたようです。6分も経たずして発表を終えました。正直この時点では、ダメだったか、とかなり落ち込んでいました。

ただ、気をとりなおして質疑応答では、なかなかよかったのではないかと思います。僕の前年に参加していた友人から、会場を一回くらい沸かせろというハードルの高いアドバイスをもらっていたのですが、それもなんとかクリアすることができました(笑)。5分間に寄せられる質問のうち、1つか2つは想定外のものでしたが、落ち着いて簡潔に返答ができたと思います。

他選手についての感想

Q. 他の選手の方々や、彼らのスピーチについてどのような感想を抱かれましたか。

A. 単純に面白かったです。ひとつの与えられた議題にたいして、これだけ多様なアプローチで答える仕方があるのだな、ということがよくわかって、より一層難しい議題だったんだなあと認識を新たにしました(笑)

決勝大会参加者のうち、何人かはいわゆる帰国子女の方々がいて、フランス語能力という点においては圧倒的に叶いませんでしたが、僕と同じように、それぞれが議題と対峙してもがいた痕跡は随所から見受けられたのも面白かった。大会とはまったくべつに、発表者全員で表現の自由についての討議をしたいくらいでした。

勝因について

Q. 激戦の中、優勝することのできた勝因はなんだとお考えですか。秘訣を教えてください。

A. 実のところ、わかりません。大会に臨む前は自信がありましたが、当日にほかの参加者の発表も聞いて、希望半分落胆半分という感じで結果発表を待っていました。

ただ、実際に講評で評価していただいた通り、やはり質疑応答が大きかったのかな、とは思います。他の参加者のいくつかの質疑応答では、明らかに質問の意図を汲み取りきらずに答えてしまっているものや発表原稿のくり返しに終始してしまっているもの、長々と話して結局論点が見えてこないというケースなどがありました。審査員の方々は、大学で教鞭をとられている方たちばかりですから、そういう中途半端な質問の受け答えには人一倍敏感であると思います。そのなかで、質疑応答をとおして、簡潔かつ明確に、筋のとおった自分の意見を言えること審査員や聴衆のを自分の意見に同調させるという意味ではなく、かれらにいかに自分の論点を掴んでもらえるか、ということが重要でしょう。
とくに、「表現の自由はどこまで許されるか」という議題は非常にむずかしく、一義的な答えが出ないということは明白でした。そのなかで、どれだけ建設的な議論を提出できているかということも審査基準としては重要だったのではないかと推察します。

 

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優勝賞品で渡仏

Q. フランス語コンクールは、その賞品が豪華であることで知られていますが、優勝後、賞品をどのように活用されましたか。

A. 僕の年の副賞は、パリにあるACCORDという語学学校における4週間の研修とホームステイ、往復航空券というものでした。ちょうどDALF C2の受験準備中だったので、アカデミックなフランス語表現能力をさらに向上させようという目的意識をもって短期留学に臨めました。

とはいっても、大抵は趣味で映画を見たり、美術館に足を運んだり、もともとの友だちや語学学校で知り合ったひとたちと飲み歩いたりと、実際は遊んでばかりでした。そういう意味でも大変充実していました。
ちょうど大学の春休み期間中だったので、4週間の語学研修に入る前に、数週間にわたってヨーロッパを旅行もすることができました。以前留学していたエクス=アン=プロヴァンスにも再訪して、かつての友人と再会したりと、有意義な期間が過ごせたと思います。日仏会館にはあらためて感謝したいです。

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フランス語コンクールは、その規模自体は、たとえば英語のスピーチコンクールなどに比べるとまだまだ小さなものですが、非常にレベルの高い催しで、フランス語学習者にとっては、いい刺激を受ける絶好の機会です。ボク自身も、コテンパンに敗退したものの、この大会で得られた経験はとても大きなものでした。興味のある方は、ぜひご参加ください。

2016年度フランス語コンクール概要

この度、パリノメモのインタビュに応じてくれた井上遼さんはブログ「イモブログ」を運営されています。

井上遼さんのブログ:「イモブログ」

井上遼さんのブログ:「イモブログ」

 

早稲田大学で哲学を専攻されているということで、日常の事柄を非常に文化的に捉えた記事を多く執筆されています。フランスに関わる記事も多数ありますので、ぜひ訪れてみてください。

 

 

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