
こんにちは、パリノメモの筆者をやっているジュロウです。ツイッターはこちらです(@Parisnomemo_)。
大学時代にフランス留学をしたにもかかわらず、卒業後にまたフランスに来て現在生活をしています。
そんなこんなでフランスに関わるようになって思うことは、ヨーロッパとアメリカは全然違うということです。
それなのに、日本ではヨーロッパとアメリカを一括りにする「欧米」という表現をいまだに頻繁に使っています。これ、さすがにそろそろ注意して使ったほうがいいんじゃないでしょうか。
「欧米」ってなんだ?
「欧米では…、欧米では…」と、この表現日常的にホントよく聞きますけど、「欧米」って言葉は何を指したいんでしょうか?
Googleで「欧米」って検索してみました。

なるほど…。「欧米」って、ヨーロッパとアメリカのことなのか…。
こんどはWikipediaを参照してみるとこう出てきます。
欧米(おうべい)とは、ヨーロッパとアメリカ州の3大陸を指す。
狭義では欧州の先進国及びアメリカ合衆国とカナダの北アメリカ2ヶ国とを合わせた集団を指す。
なるほど、「欧米」ってヨーロッパとアメリカだけにとどまらず、カナダのことを指すこともあるんだ…。
広辞苑のちからを借りてみました。
おう−べい【欧米】
欧羅巴(ヨーロツパ)と亜米利加(アメリカ)。
広辞苑 第五版
なるほど、「欧米」ってやっぱりヨーロッパとアメリカのことを指しているんだ。
ひとつの言葉で2つの場所、ときにはカナダまで含めて3つを指すことができるから、「欧米」ってとても便利な言葉だってことがよくわかります!
「欧米」ってどんなときに使われるのだろう
そんな便利でたまらない「欧米」っておいう言葉は、実際にどのような場面で使われているのでしょうか。
日経デジタルに「欧米」って単語を入れて検索してみました。「欧米」っていう単語がタイトルに使われている記事はたとえば以下のようなものがありました。
- スズキ、欧米向け二輪車、レース仕様車ベース
- 東証前引け、続落 欧米株安が重荷 円下落受け下げ幅縮小
- 欧米富裕層を広域誘惑 石川県など、現地旅行2社招く
などなど…他にも大量にありますが、とりあえず3つ取り上げてみます。
ふむふむ、これらの記事を見る限り、マーケットの対象とか企業株を広い範囲で指し示すために「欧米」っていう単語を使っているのがよくわかりますね。
さすが日本大手の経済新聞、「欧米」という便利な言葉を、ちゃんと有効活用しています。これらの例からよくわかるように、主に経済用語として使うときは、「欧米」っていう言葉は上手に機能するみたいですね。
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じゃあもっと一般的なレベルではどうでしょうか?
Googleで「欧米」と検索してヒットするブログ記事やその他中小メディアの記事を取り上げてみます。
- 日本ってこんな国だったの?中国人も欧米人も「震撼」する点(Searchina)
- 日本と欧米の企業文化の違い(よつブログ。)
- 欧米人「ドン引き」。他人のために休暇を過ごす「日本人」(Be inspired)
- 海外の反応 なぜ日本人男性は欧米人女性と恋愛しないのか?(MADAME RIRI)
うーん…?
こんどはTwitterで「欧米」っていうキーワードを検索してみましょう。
日本から世界に知れ渡った「KARO−SHI」
日本の労働環境を表す言葉として「過労死」が世界の共通語です。
15~64歳・男性の1日の労働時間を世界と比べると日本はダントツの1位です。日本のひどい労働状況が欧米でも報道されることが増えました。
日本の社会構造は狂ってます。— asuka (@asuka_250) 2016年10月9日
そうなんだよなあ〜。RT @cry_gra: @May_Roma 現在ドイツで就活中の学生です。欧米企業のポジションは基本職歴(長期インターン等)必須で、日本の大学卒だと職歴が無いに等しく破茶滅茶不利です。高校生の人達に海外の大学行くことを勧めたいです。
— めいろま (@May_Roma) 2016年10月9日
うーん…。
言いたいことはわかる!…わかるんですけど、ちょっと「欧米」っていう言葉を乱用しすぎてはいないでしょうか。
たとえば、「日本と欧米の文化の違い」とか「欧米人との恋愛」とか「欧米での報道」とか、「欧米」を文字通りの意味で捉えると「ヨーロッパとアメリカ」ってことになりますけど、ヨーロッパとアメリカってそんなに簡単に一括りにしてしまってもいいんでしょうか…?
ヨーロッパとアメリカって全然違う地域ですよね?
そもそもヨーロッパには50ヶ国近い国々が属していますよね…?
とりあえず白人っぽい国が「欧米」?
批判を覚悟でいうと、日本人って、とりあえず白人が住んでるっぽい国々を「欧米」って一括りに表現しちゃう傾向がないでしょうか?
こう言うとあまりにも極端なのはわかっているのですが、でも根本的には本当にそうだと思っています。
「欧米人との恋愛」なんか典型的だと思います。これってアメリカ人との恋愛ですか?フランス人との恋愛ですか?イタリア人との恋愛ですか?
たぶん全部ですよね。アメリカ人でもフランス人でもイタリア人でも、たぶんどれでも当てはまりますよね。だって住んでるところとか出身地なんか関係なく、とにかく「白人との恋愛」って言いたいんですよね。
でも、アメリカ人もフランス人もイタリア人も全員違う人達ですよ?
考え方も違うし、生活の仕方も違うし、食べるものだって違います。
それを全部一括りにして「欧米人」って表現してしまうのはちょっと大胆すぎる気がします。
日経デジタルが使っているように、経済用語としての「欧米」っていう言葉はまだ寿命がある気がしますが、なにか文化的なことを言おうとするときに「欧米」を使ってしまうのにはそろそろ注意を払ったほうがいいんじゃないでしょうか。
ヨーロッパとアメリカの文化はまったく違うし、ヨーロッパの中だって国によってぜんぜんタイプが異なるんです。東アジアだって、日本・韓国・中国でぜんぜん文化や考え方が違いますよね?
フランス人に、「東アジアの企業文化って変だよな〜」とか「東アジア人との恋愛って面白いよな〜」って一括りにされたら「ん?」って違和感感じますよね?だって日本も韓国も中国もそれぞれ違う文化と感性をもってますから。
近い文化圏だから、たしかに共通項はあるかもしれないけど、それにしてもあまりにも適当に一括りにしている気がしてならないのです。
海外ってどこ?外国人ってだれ?
「欧米」っていう言葉だけにかぎらず、「海外」とか「外国人」っていう言葉も安易に乱用しすぎている気がします。
「海外ではこうするらしい…」
「外国人は日本のこういうところに驚くらしい…」
海外ってどこですか?
外国人ってどの国の人のことですか?
日本人の頭のなかでは、日本の外にある国があまりにも安易に一括りにされていないでしょうか。
戦後の状況下、たしかに日本はアメリカの影響を受けすぎているので、海外とか外国人が「なんとなくその辺の人」っていうイメージがあるのはわからなくもないんですけど、もうそんな時代ではありません。
いまやありとあらゆる国籍の人が日本に来ているし、日本人だってありとあらゆる国に行ってます。
それなのにいまだに日本の外にある国を全部一括りにしてしまうのは、あまりにも教養に欠ける行為ではないでしょうか。
日本が島国だからって、島の外を全部テキトーにイメージしてしまうのは、そろそろ終わりにする時だと思います。
これからは、各国に各国の文化や考え方があって、それぞれ違うんだと理解しないと、変に摩擦を産んでしまうことだってあるかもしれません。
日本の居酒屋でフランス人と食事をしていて、隣の客から妙に高いテンションで英語で絡まれるなんて経験を何度もしたことがあります。
とりあえず「白人=外国人=アメリカ人(?)」は高いテンションを好むという偏見でもあるのでしょうか。そんなの国によって違います。というか人によって違います。
静かに食事を楽しみにきたコチラからしてみれば困惑以外のなにものでもないのです…。なんならフランス人を寿司屋で接待しているときにそういうこともあったので普通に迷惑でした。
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「欧米」・「外国人」・「海外」、これらの言葉の使い方からは、どうも日本人の頭の中にステレオタイプな白人のイメージが根強く残り続けているんじゃないのかと思わされます。
日本人同士だけで生きていくのであれば全く問題はありませんが、年々増える日本への多国籍の観光客、年々増える日本から外に出る人々を考慮すると、国によって文化も考え方も違うんだってことをちゃんと理解していないと、どこかで大きな問題が起きる気がしてなりません。
「欧米」って言葉の安易さについて、これフランスに関わるようになってからずーっと思ってきたことなんですけど、みなさんはどう思われますか?ボクが過敏なだけなのでしょうか…。
いちゃもんつける気は別にないのですが、では「欧米人」にとっての”West”って何なんでしょう?日本語の「欧米」と同じように、アメリカとヨーロッパが含まれていることが分かります。そもそも日本語の「欧米」とは、”West”を翻訳する際に考案されたのではないでしょうか(ただの思いつきですが)。。。
コメントありがとうございます。いちゃもんでは全くありませんし、仮にいちゃもんでも大丈夫です!意見に対して「反論」をすることは次の可能性を産んでくれるからです!
さて、おっしゃる通り、「欧米」を英語で言うと「the West」になりますね。「the Occident」も同様です。これらの言葉も、ご指摘の通り、ボクが批判した「大胆なくくり」として機能していると考えられます。
実際にこれらの言葉がどういう文脈で使われているのかまでは把握していませんが、少なくともこういった表現たちの延長線上に、サイードが引き起こしたオリエンタリズムの議論があるのだと考えられます。
どんな経緯はあれ、またどんな意見があれ、事実としてボクたちが世界を西と東に分けて大胆に分類する傾向はあるようです。
ただ、ボクは今回そんなガチな議論を引き起こしたかったのではなくて、もうちょっと世界を細かく区分けして理解してもいい時期なんじゃないかと、そう提案してみたかったのです。
さすがに10, 20年前に比べればヨーロッパに行ったことがある人もたくさんいるだろうし、それぞれの地域に訪れて違いを感じた人もいるだろうし、「欧米人=白人(っぽい感じのなんかあれ)」という認識を変えていったほうが、いろいろとスムーズに文化交流ができるんじゃないかな、と思ったのです。
さて、あんまりこの分野は専門ではないので、もっと多方面からいろんな人の意見を聞いてみたいですね!
向こうも日本だの中国だのみんな纏めてアジアと一纏めに言う。そんで「アジア人の国なんてみんな大して変わらんだろ」的な興味皆無な感覚。
どーでもいい他所の国のことを一纏めに欧米と読んだって何も問題はない。
どうでも良いと思ってるあんたははいつまでも何の意識もすることなくその言葉を使い続けてれば良いんじゃないか?
ぼくは筆者の意見に大いに賛成だ。
日本の島国意識がネガティブに働いた産物の一つのように感じる。