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【インタビュー】きっかけはストリップ ―― 私がフランスで人間の「性」を研究する理由

2016/11/27

 

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こんにちは、パリノメモの筆者をやっているジュロウです。ツイッターはこちらです(@Parisnomemo_)。

 

今回はインタビュー記事となります。

インタビューを引き受けてくださったのはパリ在住の木村優子(きむらゆうこ・24歳)さん。大学時代に女友達と冗談半分でストリップショーを見学し、予想外にその芸術性に魅了され、いまやフランスで人間の「性」について本気で研究をしているパリ第3大学・修士課程に所属されている方です。女性だからこその視点で「性」の作品的魅力に気づき、それをアカデミックに研究している木村さんのお話をお届けします。

 

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「高校時代は吹奏楽と文芸をやってました」

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―― お時間をとってくださりありがとうございます。まずは自己紹介をお願いします。

木村と申します。秋田県出身で、立教大学を卒業したあとにフランスに来て、今はパリ第3大学の修士課程に所属しています。大学時代からフランス文学を専攻していて、今に至るまで研究テーマは「性」です。

 

―― 面白い研究テーマですね。大学時代からフランス文学を学ばれているということですが、フランス文学を選んだきっかけはなんですか。

もともと、高校では吹奏楽をやっていたんですよ。小学校のころからずっとやっていたから当然のごとく高校でも楽器を続けたんですけど、なんだか部活に馴染めなくて、当時興味があった文系部で小説を書いたりエッセイを書いたりしてみようかなって思いました。

やるからにはと思ってがんばってみたら、自分の書いたエッセイが入賞することもあって、どんどんハマっていきました。そういった体験が自分を文学研究の道へと進めてくれたんだと思います。

小学校のとき『ベルサイユのばら』とかを読んでてフランスに憧れもあったので、フランス文学を選びました(笑)

 

―― 関係ないかもしれないんですけど、金髪にされたきっかけは――?

大学時代になんとなく髪を染めてみたいなーと思って、でもなんか普通の茶色は抵抗あったし、黒髪は地味だなって思ったし、それで金髪です。ちなみに受験勉強のときはサイドを刈り上げてハートマークとか入れてました(笑)

 

―― なんだかめちゃくちゃ個性が強いですね。

そんなことないですよ(笑)まぁでも、日本にいたころは周りと馴染めないことも多かったかもしれません。就職活動とかも、ほんとは最初はやってみようと思ったんですけど、全員黒髪リクルートスーツの姿を見て「あ、これはちがうな」って思いました。失礼かもしれないですけど、なんだか皆おにぎりみたいで私にはできないなと…。

 

「初めてストリップショーをみた時、もうこれは1つの作品なんだなと思いました」

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―― ストレートな質問になりますけど、なんで「性」に興味をもったんですか?

最初のきっかけは日本で行ったストリップショーでしたね。大学時代、仲が良かった女友達と一緒に好奇心で一度行ってみたんですけど、全身を使って華麗に表現をする踊り子さんの姿をみて「あぁ、ここはテアトルなんだな」って思いました。その後、ズブズブとハマってしまって、卒業論文を書くときのテーマを「性」と結びつけてみたんです。

日本の大学時代はけっこう異色なものとして周りの友人から見られたかもしれませんが、フランスでは「性」ってけっこう一般的な研究テーマなんですよね。

 

―― たしかに、フランスってけっこう人間の「性」をちゃんとした学問のテーマとして捉えている節がありますよね。

そうなんです。たとえば『性の歴史』っていう大著を書き上げたミシェル・フーコーなんか典型的ですよね。私の研究でもめちゃくちゃ重要な参考文献になってます。

日本では、性的なことってなんとなく目を背けなくてはならないような風潮があるんですけど、人間にとって最も大事なことの1つですし、躊躇なく人間の性文化に踏み込もうとするフランスという国の姿勢は私にとって良い環境になっていると思います。

恥じらいの文化があるからか、日本人はみんな「私性器ついてないですよ」って顔して歩いてますからね(笑)

 

―― フランスでもストリップショーを見に行かれますか?

フランスに来てから少ししか経っていないので、まだ2回しか行けてません。40~60ユーロと、若干値段が高いっていうのもあるからなんですけど、行ってみた感じ、日本とはまた違った雰囲気があるってことがわかったんでこれからどんどん突入してみようと思います。

 

―― 日本とフランスのストリップショーにはどういった違いがあるんですか?

たとえば日本の場合、踊り子さんの純粋なファンが客として来ていることが多くて、みんな踊り子さんのショーを1つの作品として楽しんでいる雰囲気があったんですよ。でも、フランスだとむしろその逆で、みんな前のめりになって踊り子さんの胸とか性器をジーッと見つめているんです。今のところの感想ですけど、フランスは純粋に性的興奮を覚えに来てる客が多い印象ですね。

 

―― 本村さんは1人で見に行かれるんですか?

今のところは1人ですね。

いざ入ってみると女の人が全然いなくて、ショーを見に来てるフランスのおじちゃんに「??!…あぁ空いてるよ。どうぞ」みたいな反応をされました(笑)カップル割ってのがあったから、女の人が見に来ることもあるはずなんですけどね(笑)

 

『私がとくに注目しているのは「老人の性」です』

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―― 今は、具体的にいうと「性」についてどういう視点から研究されているんですか?

私の具体的な研究テーマは「老人の性」です。

日本でストリップにハマっていた頃、最初は大好きな踊り子さんがいて、その人について小説を書いて卒業研究として提出しようと思ったんですけど、いろいろとそれは厳しかったので、私はストリップショーを見に来る「客」に注目してみようと思いました。

大体50~70歳の老人の方々が大多数でしたので、そこで「老人の性」というテーマにたどり着きました。

 

 

―― 「老人の性」ですか…。あまり想像がつかないんですけど、少し説明してもらってもいいでしょうか。

そうなんですよ、「老人の性」ってあまり想像がつかないんです。でも、ストリップショーを見に来るお客さんは大体が老人なので、彼らは確実に性的なものに興味があるんですよ。

文学作品にも老人の性関心とか性行動とかはちらほら現れていて、日本だと谷崎潤一郎、フランスだとマルキ・ド・サドとかは、自分の小説でこれでもかというくらい主人公である老人の性癖やセックスについて語っているんです。

でも、なんだか世の中には老人は性的なことに興味をもってはいけないっていう抑圧的な空気が流れている気がして、そのギャップはなんで生まれるんだろうと純粋に疑問に思いました。

老人だって性的なことに興味があるはずなのに、暗黙の了解でそれがダメなことだとされている、その実態が私の研究の起点となっています。

 

―― なるほど。すごい独特な視点ですね。将来は研究者の道へ進まれる予定ですか?

研究者としての道も考えてはいます。ただそうなると、ただでさえ大変な修士課程を終えて、そのあと博士課程に進んで…と、あまりにも道のりが長いので自分のモチベーション次第ではありますね。

いずれにせよ、どうも自分は人の下で働くのが苦手なようで、一般企業に就職という道はできれば避けたくはあります。高校時代の文芸部の体験から、自分は何かを書くのが好きなんだなってことがわかったんで、物書きとしての道も視野には入れてます。

あとは……どうしてもストリップショーの華麗な表現への憧れがあって、自分なんかには到底難しいとは思うんですけど、いつか一度だけでいいからストリップの舞台に上がって、自ら表現をしてみたいっていう気持ちもあります。大学院に進学しようとしたころ、ストリッパーになることも真剣に考えていたんですよね…。

 

―― 最後になにかメッセージをお願いします。

 

そうですね…もしこれからフランスやその他海外の大学院に興味がある方がいましたら、不安だらけだとは思いますが、テキト〜に生きている私でもなんとかなっているので安心してください!

偉そうなこといえる立場ではないんですが、あんまり気張りすぎても髪の毛とタバコの減りが早くなるだけなんで、自分のペースで進んだ方がいいと思います(笑)

自分の好きなことがひとつだけでもあれば、あとは楽観的にいれば、純粋に楽しいし、精神的にも楽になります。

ちなみにフランスのアンダーグラウンド文化はとってもとっても面白いので、もし留学先に迷っていたらフランスもぜひ候補に入れてあげてくださいね!

 

パリノメモのコメント:今回はストリップショーの作品性に見せられて、それを起点にアカデミックに「性」についてフランスで研究をしている本村優子さんへのインタビューでした。自分の憧れと興味に素直にしたがって我が道を貫く本村さんの眼差しからは、周りを惹きつける不思議な魅力がにじみ出ていました。何かを表現したいという彼女のアーティストとしての素質を、パリノメモも心から応援しています。インタビューを引き受けてくださった本村さん、ありがとうございました!

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